法律知識

**に相続させるという遺言書 有遺言書の中に特定の遺産を**に相続させるとの遺言をした場合、その遺産はいつ継承されるか?
A女には、夫Y1と長女Y2、二女X1とその夫X2並びに三女X3が関係者として存在していた。
A女は、生前に土地(1)から(7)を購入し、また土地(8)については、共有持分4分の1を取得していた。 A女は、生前に自筆証書遺言で次のような遺言を行った。
昭和58年2月11日付けで(3)から(6)の土地について「X1X2一家の相続とする」との遺言をした。
昭和58年2月19日付けで(1)(2)の土地について「X1の相続とする」との遺言をした。
昭和59年7月1日付で(7)の土地について「X2に譲る」との遺言をした。
昭和59年7月1日付で(8)の土地の共有部分4分の1について「X3に相続させて下さい」との遺言をした。 そして、A女は、昭和61年4月3日死亡した。
その結果、A女の夫Y1と長女Y2が土地(1)から(8)の承継から除外された。 A女の、これらの遺言書は、昭和61年6月23日、東京家庭裁判所において検証手続きを経たがY1,Y2らは、この遺言の作成事態を争うと共に、土地(1)から(8)に関するX1X2X3の権利取得を争った。 そこで、X1X2X3は、Y1Y2を相手に土地(1)から(8)の所有権X1は(1)から(6)X2は(7)X3は(8)についての共有部分を取得したことの確認を求めて訴訟を提起した。
第一審判決(東京地裁昭和62年11月18日)はA女の自筆証書の有効性を肯定した上で、遺言の趣旨を次のように解した。 A女の相続人ではないX2に対する遺言は、遺贈であると解し、X2は、土地(7)の所有権を取得したことを認めた。
A女の相続人であるX1X3に対する遺言は、遺産分割方法の指定と解するのが相応であるとし、そのためX1X3は遺言によって、直ちに(1)から(6)及び(8)の権利を取得するのではなく、遺産分割の手続きで、遺言の趣旨に従った分割が実施されることにより、はじめた相続開始時にさかのぼって権利帰属が具体的に確定されるのであり、それまでは遺産共有の状態にあるにとどまるとした。 そして、X1X3の請求に対し、X1X3が法定相続分として持つ共有持分のX1は(1)から(6)について各6分の1、X3は「8」についてA女が有した4分の1の共有部分の6分の1で認め、その余の請求を棄却した。X1とX3が控訴した。
第2審判決(東京高裁昭和63年7月11日)は、第一審判決を、一部変更した。 この判決もA女の自筆証書遺言の有効性を認めた上で、遺言の趣旨につき、次のように判断した。
A女の相続人ではないX2に対する遺言は、第一審同様、遺贈であると解し、X2は、土地(7)を本件遺言の効力が発生した昭和61年4月3日(A女の死亡)に取得したと判断した。
A女の相続人であるX1X3に対する遺言については、遺贈であるとみるか、遺産分割方法の指定と見るかの問題は、被相続人の意志解釈の問題であるとしながらも、2者両立の途があるのであれば、望ましいのは、遺産分割方法の指定と解すべき事になると考え、遺産分割方法の指定と判断した。ただし、第一審と異なり、X1X3が土地(1)から(6)、(8)について、優先権(遺産分割協議にあたり、遺言に基づく遺産の指定を受ける)を主張した時点で分割協議の成立の時点と解釈し、その結果、相続時にさかのぼって、その遺産を取得するとの解釈を示した。 そして、X1について、土地(1)、(2)の所有権と土地(3)から(6)の2分の1共有持分(残り半分は、X3の共有と思料される)、X3についての土地(8)のA女の持分全部分の取得を認めた。Y2が、X1に対して上告した。
判決の要旨 (最高裁平成3年4月19日第2小法廷判決)上告棄却。

建築基準法65条と民法234条1項 建築基準法65条と民法234条1項との関係に関する最高裁の判断
XとYは、大阪市内のある駅近くの商業地域内に相互に隣接する形で土地を所有していた。
昭和51年4月頃、Yは、Xの了解を求めることなく、Xの土地との境界線から距離が50センチに満たない部分にまたがって耐火構造の外壁を持つ鉄骨造3階建ての建物の建築をはじめた。 当該地域は、準防火地域に指定されており、Yの建物の外壁は、建築基準法65条の要件を満たす耐火構造であった。
なお、当該地域には、境界線から50センチの距離を置かないで建築物を建築できるとする慣習は存在していなかった。
Xは、Yに対し、民法234条1項により、建物を建築するには、境界線より50センチ以上の距離を置くことが必要であるとして、境界線から50センチ内の建物部分の収去を求める訴えを提起した。
第一審大阪地裁昭和57年8月30日、第2審大阪高裁昭和58年9月6日は、いずれもXの請求を認め勝訴させた。 その理由は、建築基準法65条の要件に該当する建物についても、直ちに民法234条1項の適用が排除されるのもではなく、合理的理由が存在する場合に限って建築基準法65条が優先されるにすぎないとする考え方に基づき、本件の場合に、合理的理由がないとの判断からであった。 そこで、Yは、その判断を不服として上告した。
(最高裁第三小法廷平成元年9月19日判決)原判決棄却、Xの請求棄却(Yの勝訴)

私道通行権に基づく妨害排除請求 私道の通行権に基づきその私道部分に設置されてある物の撤去をどこまで請求できるか
**は、土地の開発や建築を業とする株式会社であった。
昭和59年12月、Xは建築物を建てるつもりでAが所有していた土地(以下「A地」という)を買い受けた。 ところが、A地はY所有の隣地(以下「Y地」という)に接しておりかつそのY地内の建物基準法附則5項、同条42条1項5号の規定により、道路位置指定があったものと見なされる私道部分に接していた。
Yは、従前からY地内のA地と接する部分にブロック塀を設置しており、A地の球所有者Aの当該部分を通行して公道に出ることはなく、Aは、他の私道を通って公道に出ていた物であった。 このブロック塀の場所には、元々A地と接する部分に生け垣が設置されており、昭和27,28年頃、A地の居住者が、この生け垣を取り壊し、その後に杭と鉄線で垣根を作っていた物を昭和49年Yによって、その境界線に沿う形で本件ブロック塀が設置されたものであった。 そして、Yは、昭和48年にY地の建物を建築し直しているが、その当時も、本件ブロック塀で囲まれた部分に道路位置指定が存在していることさえ知らなかったようである。
Xは、A地を買い受ける際、A地の所有者のAの利用の現状や、Y地の現状並びに道路位置指定の事実を知り尽くしていた。そこで、Xは、Y地内でブロック塀で囲んだ部分は、私道であり、Xはその私道を通行する自由を有している。そうした道路内に建築物を建築することは制約を受けるのであるから、そのブロック塀により、Xが私道を通行する自由を妨げるとして、Yに対し、ブロック塀の撤去を求めた。
また、予備的に、Aちは袋地であるため、XがY地のブロック塀で囲まれた部分を通ることが公道に至るために必要にして、損害の最小の場所であるから囲繞地通行権を持っている。したがって、その権利を妨害しているからブロック塀を撤去せよと求め、訴えを提起した。
判決の要旨 (東京地裁平成2年3月30日判決)Xの請求棄却(X控訴したが控訴棄却、確定)。

駐車場専用使用権の法的性質 マンションの分譲に際し分譲主側に留保された駐車場専用使用権の法的性質について
Aは、本件マンションの敷地である本件土地の所有者であったが、昭和46年頃、本件マンションを建築し分譲する計画を持ち、B信託銀行に分譲委託を行った。
Aは、このマンションの計画に当たり、マンション内にステーキハウスを営業したいので、その為の駐車場を留保したい事と、分譲価格を坪当たり45万円くらいにしたい旨の希望を出した。
B信託銀行の担当者は、Aの希望に対し、借入金の金利等の計算をすると、分譲価格は少々安くしても早く売った方がよいので、坪当たり38万円くらいにし、その代わりに駐車場の専用使用権を施主に留保し、これにより収益を得るようにした方がよいとアドバイスした。 その結果、本件分譲マンションは、昭和47年頃、Aに本件マンション1階店舗と2階事務所並びに本件1階駐車場部分の専用使用権を留保する方法で分譲が行われた。
なお当時、本件駐車場部分の評価を1000万円と見て、その利益を分譲主に留保させるなど総合的に考慮し、本件マンションの分譲価格坪当たり36万5000円と決定した。 本件マンションの分譲に当たっては、パンフレットに施主として、Aが記載され、設備概要の主要設備欄には、「駐車場(賃貸、施主経営)」と記載し、「お支払い方法とローン」の欄にも「駐車場(収容能力20台)は賃貸、施主経営」との記載がされていた。
また不動産売買契約書では、本件駐車場は共用部分に属するものとされ、本件駐車場を使用細則にしたがい、売主Aに専用しようさせることを承諾する旨の規定がある。更に同契約書には、本件駐車場の専用使用権を区分所有者以外の第3者に管理規約、使用細則を尊主の上貸与することができる旨の規定もあった。 そして、管理規約の中で「区分所有者は、共有の土地の内駐車場を(使用上のご注意)の定めるところに従い、専用使用権者「施主A」に専用使用させる物とする」とし、「右の専用使用権は、この建物の区分所有者以外の第三者に管理規約、使用細則を尊主の上貸与することができる」と規定していた。 但し、この専用使用権の存続期間について、定めはされていなかった。
分譲に当たったB信託銀行の担当者の、買主に対し、本件駐車場の専用使用権が施主Aに留保されることの説明を行い、また本件マンションを買主に引き渡す際にも、その条項の説明を行った。 その為か、分譲直後からしばらくの間は、本件専用使用権が施主Aに留保されていることについて、本件マンションの居住者から意義や疑問がでなかった。本件駐車場は、本件マンションの1階部分の一部になり、その面積は、敷地全体の40%(369.50m2)にあたる。
駐車場の構造は、本件マンションの建物の外壁を利用して周囲を囲んでおり、出入り口は、西側に2カ所、南側に1カ所あり、いずれも解放されていて、マンションの居住者や第三者自由に出入りできる状態になっている。 本件マンションの1階には、施主Aのステーキハウスの店舗と本件駐車場があるだけで、他の居住者は2階以上におり、他の居住者は本件駐車場を通らなくとも各自の階に自由に出入りできるようになっていた。
ところで施主Aは、分譲当初より本件駐車場の内、一部(35m2)を本件マンション居住者の駐車場として無償提供し、そのほか、施主Aが他に有する私有地をマンション居住者の来客用駐車場として無償提供していた。なお、本件駐車場の20台の内、5台は本件マンション居住者に賃貸され、残りは第三者に賃貸されていた。
施主Aは、昭和60年9月16日死亡し、Yらが相続人となって、これらの立場を承継し、これまでの関係が継続された。 しかし、昭和61年頃、本件マンション居住者46名であるXらは、Yらに対し、本件駐車場専用使用権は公序良俗に違反して無効であり、Xらの本件土地の持分に基づき、本件土地を明け渡すよう求めると共に、Yらが本件駐車場からあげてきた収益を不当取得であるとして返還するように求めて本訴を提起した。
第一審(神戸地裁尼崎支部平成元年12月22日)判決は、本件駐車場専用使用契約が公序良俗に反し、無効であるとして、Xらの請求を容認した。Yらは控訴した。
判決の要旨 (大阪高裁平成3年3月28日判決)原判決取り消し。Xらの請求棄却。

管理組合理事の代理性 区分建物の管理組合の理事会への代理出席を認める規約が有効と判断(最高裁)
本件区分建物は、リゾートマンションであるが、管理組合が結成され複数の理事が選任され、理事会が設定されていた。しかし、リゾートマンションであるため、理事が本件建物に定住していないことが多く、理事会を開催しても理事の出席の確保が困難であった。 そのため、管理組合規約を改正し、「理事に事故があり理事会に出席できないときは、その配偶者または一親等の親族に限り、これを代理出席させることができる」との規定を新設した。
これに対し、区分所有者の一人Xが、この新設した規約は、区分所有法49条7項により準用する民法55条が定めた法人の理事の行為について包括的な代理行為区分所有者の総会決議の無効確認の訴えを提起した。
第一審判決(大阪地裁平成元年7月5日)は、Xの請求を認め、総会決議を無効としたが、第2審判決(大阪高裁平成元年12月27日)は、逆にXの請求を棄却し、規約は有効なものであると判断した。そこでXが上告したものである。
判決の要旨 (最高裁平成2年11月26日第2小法廷判決)Xの上告を棄却した(本件規約は有効)
新拒絶の通知と期間 借家契約の期間満了前の更新拒絶の通知が法定期間を尊守しなかった場合でも解約申し入れと同様の処理を認めた事案
Xは、その所有の建物を昭和55年6月30日、Yに対し、契約期間、昭和55年6月12日から昭和57年6月13日まで、賃料月額金月8万5000円、敷金17万円で賃貸した。
その後XとYは、昭和61年8月頃、賃料を月額金9万円に改定し、契約期間をしょうわ63年6月13日まで更新した。 しかし、Xは、その家族と共に夫の勤務先の社宅に居住していたが、その夫は昭和62年1月1日に退職し、6ヶ月後の昭和62年6月30日までに社宅を立ち退くように命じられている。 そのため、Xは、Yに対し昭和62年6月15日、この賃貸借契約の更新拒絶の通知をし、その通知がYに届いた。
Xの事情は、夫と息子2名の4人家族であり、夫は退職後、関係子会社に再就職しているが、収入は、それ以前よりも減少し、息子らは独身で、1人は学生であり、X自身は身体に障害を有している状況でもあった。
一方、Yの事情は、Yの妻とその息子の3に家族であり、Yは、70歳と高齢で、ホテルのマネージャーとして働いており、あまり収入も多くはなく、息子は、やや病気の状況で、他に持ち家などがない。
こうした状況の下でYは、立ち退きを拒否したため、XはYに対し建物明け渡し請求訴訟を提起するに至った。
この訴訟でXは、Yに対し、建物賃貸借の更新拒絶の正当事由があると主張して明け渡しを求めた。 そして、予備的に、裁判の第3口頭弁論期日である昭和62年12月17日に更新拒絶の正当事由を保管する立ち退き料として金300万円を提供する旨申し出た。場合により裁判所の決定する金額を支払うとの趣旨でもあった。
これに対しYは、更新拒絶の正当事由を争い受渡を拒否し続けた。 第一審(大森簡易裁判所平成元年2月9日)判決は、Yの主張をいれ、Xの更新拒絶の正当事由を否定し、請求を棄却した。しかし、Xは、これに不服として控訴した。
判決の要旨 (東京地裁平成元年11月28日判決)Xの請求一部容認、一部棄却(確定)
貸主の修繕義務 建物賃貸借における貸主の修繕義務と特約について
賃借人Xは、昭和42年1月に本件建物の全所有者Aから、2階部分を借り受け、同48年11月22日に、1階部分をも借り受けて居宅として使用してきた。
その後、貸主Aが死亡したため、昭和50年11月23日の契約更新時に、Aの相続人Bとの間で賃貸借契約を締結して使用してきたところ、昭和51年10月28日、貸主Bは、本件建物をYに売却した。
XとYは、昭和52年12月30日に本件建物について次の通りの賃貸借契約を締結した。
1)契約期間-昭和52年12月1日から同54年11月末日までの2年間
2)賃料-一ヶ月金5万3000円
3)使用目的-居宅
4)修繕義務-本件建物の部分的な小修繕は賃借人が費用を負担して自ら行う。
そして借主Xは、本件建物の使用を継続してきたが、その間、賃料は昭和59年7月分から1ヶ月金6万5000円、昭和63年4月分から1ヶ月金9万7000円に改定された。 しかし、前記賃料改定後の契約期間の満了以降、契約は法定更新されて今日に至っている。
ところで本件建物は、昭和41年12月に新築された木造セメント瓦葺き2階建て(1階39.62m2、2階34.66m2)で、1階が6畳和室、7畳洋室、台所、便所、2階4.5畳の和室3室と便所からなっている。筑後4年を経過し相応の老築化が進んでいるが、立て直しの時期が来ているとまでは評価できない状態のようである。
賃借人Xは、本件建物を使用していて次のような不具合が生じているため、貸主Yに対し修繕を求めた。
1)本件建物の屋根はセメント瓦葺きだが、瓦のずれや破損のため2階南西の四畳半の和室に雨漏りが生じ、その為部屋の天井にシミが出たり、天井板が剥離し、割れが生じている。従って、セメントがわらのずれまたは割れの部分を補修せよ。
2)1階北側の玄関及び台所の屋根は、さしかけ鉄板葺きとなっているが、腐食のためか、鉄板の接続部の緩みで空隙が大きくなったためか、その他の原因か、必ずしも特定できないが雨漏りが生じている。従って、さしかけ鉄板葺き屋根を全面新しい材料で葺き替えよ。
3)本件建物の外壁最上部の白塗壁部分は、生子鉄板で覆われているが、全般的に錆が浮き出して老築化が進行している。特に、各戸袋部分を東側外壁の最下端部の腐食が大きく、2階便所の窓の周辺は腐食で穴が空いている。したがって、損傷している生子鉄板を全面的に張り替えよ。
4)また、外壁生子鉄板を張り替えよ。
5)本件建物の南側外壁妻壁の最上部の白塗壁部分がひび割れしているので、充墳材で漏水帽子をせよ。
6)雨樋も軒樋、立樋と共に損傷か破損が生じているので補修せよ。
7)1階東側洋間の床部分が床下地部材の異常により、上下に弾むように揺れる状態になっているので、束基礎、大引き、根太等の構造部材の修理と床仕上げ材の全面的な張り替えをせよ。
8)1階洋間と和室6畳との間仕切り部分の壁の上部が洋間側に倒れ、中央の柱は鴨居の位置で3.5センチ倒れているので、間仕切り壁を全面的に撤去し新設せよ。
9)2階南西側和室4.5畳野天上板が剥離したり、割れているので取り除き補修せよ。
10)2階の同室の壁がめくれているので、仕上げ材を取り除き、天井から鴨居までの全ての壁を化粧合板ではり、周囲の押縁を固定せよ。
11)1階南側雨戸が欠損老築化しているので、取り替えよ。
12)1階南側のはき出し引き違い戸が損耗しているので、アルミ製の建具と取り換えよ。
13)玄関入り口の引き違い戸の損耗が進んでいるので、アルミ製の建具と取り換えよ。
この要求に対し貸主Yは、そのような修繕義務はなく、また本件建物は、修繕不能な状態にあるものとして拒否した。
判決の要旨 (東京地裁平成3年5月29日判決)Xの請求の一部容認、一部棄却。
マンションの値引き販売 分譲販売で売れ残った部屋を値下げ販売することは違法となるか?
Xは、不動産業をしている会社であるが、平成2年6月5日、マンション分譲業者であるYから、Yが建築中の地上13階建て地下1階建てのマンションの5階の一室(以下、本件部屋という)を、代金9313万円(本体9180万円、消費税133万円)で購入する契約を締結し、平成3年5月15日、本件マンション竣工と同時に、本件部屋の引渡ならびに所有権移転登記を受けた。 Xは、不動産業者として本件部屋を購入しておき、本件マンションの他の部屋の売れ行き具合により、本件部屋を転売して利益を上げることを目的に、Yとの間で本件契約をしたのであった。すなわちXは、Yからあらかじめ配布を受けた本件マンションの価格表に基づき、他の部屋の価格と対比して本件部屋の資産評価をし、他の部屋の売り出し状況を見ながら本件部屋の転売の難易を推測し、売買契約を締結決意したものであった。
しかし、その後のバブル崩壊等により、Yは本件マンションの未販売の部屋について値引き販売をせざるを得ない状態となり、平成4年9月頃より、値引き販売を実施する方針をとるようになったようである。 そのため、Xは平成5年2月18日、本件部屋を購入価格より3200万円も下回る金5980万円でしか転売できなかった。 そのためXは、Yが次に記載する理由に基づき、本件マンションの値引き販売をしない債務を負担していたにもかかわらず、その債務に違反したために、本件部屋の資産価値が下がり、結局、金5980万円でしか処分できなかったのであるから、YはXに対し、購入価格との差額、金3200万円の損害賠償を支払うべきであるとして本訴を提起した。
Xが主張したYが値引き販売をしない債務の理由とは、以下の通りであった。
1)Yの担当者は、本件売買契約に当たり、Xに対し、口頭で、Yが後日、本件部屋と同種・同等の物件をXに対する売買価格以下に値下げして売買することは絶対にないと約束した。
2)Yの担当者は、Xの転売の意図を知った上で「一旦、契約が成立した本件部屋がキャンセルになった。このマンションは、大変好評で売り出しと同時に完売になったほどで、本件部屋も売買価格に2割程度の利益を上乗せしてもすぐに転売できる事に間違いない有利な物件だ。買っておいたらどうか。」などと勧誘したのであるから、XY間に本件契約に際し、少なくとも、本件マンションの他の部屋を価格表記載の価格を値引きして売り出すことをしない旨の黙示の合意が成立し、万一、Yが値引き販売をしたときは、Xに対し、同一の値引率の値引きを行い、相応の金員を支払うとの黙示の合意が成立した。
3)本件契約当時、マンション業界においては、新築マンションを一斉に売り出し、売出価格による販売ができない物件が出たり、キャンセルされた物件が出た場合、これらの物件を再販売する業者は、値引き販売しないのを原則とし、やむなく値引き販売する場合にも、値引き分について当初の価格で購入していた買主に損失を補償するのが習慣化していた。
4)分譲業者が、同一マンションのみ販売状況の物件について値引き販売をすれば、当初価格で購入した買主の物件の所有資産価値がそれだけ引き下げられて損害を被るから、Yら分譲業者は、みだりに、値引き販売をしない信義則上の義務を負担しており、万一、値引き販売をする場合にも、値引き分について、Xは当初価格による買主に対し損失を補償する信義則上の義務がある。
判決の要旨 (東京地裁平成5年4月26日判決)Xの請求棄却(確定)
事情変更と契約の解除 土地売買契約締結後の地下の異常な上昇等の事情は契約解除事由となり得るか?
売主Xは、昭和62年2月頃、自己所有の土地付建物(以下、本物件という)を売却し、その代金で息子らと同居するための店舗兼用住宅を購入する目的で宅建業者Aの仲介により、買主Yとの間で代金約8500万円(坪当たり103万円くらい)で売買契約を締結した。 この売買契約は、Xが買換物件を探す必要性があったため、物件引渡や残代金の支払などの最終履行期限が契約締結から1年10ヶ月後(昭和62年12月25日)とされたため、当初、買主Yは、長期すぎるとして契約を断念する意向を示した。
しかし、仲介業者Aが、売主Xのための買換物件を昭和61年9月30日まで探すよう努力し、同日までにその購入契約が締結できなかった場合には、AのYに対する仲介報酬はいらないとの約束をしたためにYは、売主Xに対し手付金として100万円を交付した。
ところが、XY間の契約締結の頃から、周辺の地価が上昇傾向を示しだし、1年後には、約4倍くらいの坪当たり400万円に、その後3倍くらいの坪当たり300万円と著しく変動する動きを示したため、仲介者Aや友人から、新物件の紹介を受けていた売主Xは、本件売買代金を持ってしては、新物件を購入することは困難と考えるようになった。
そこで、昭和61年10月24日頃、Xは、仲介業者Aを介してYに対し、本件契約の解除の話(手付倍戻しや解約金お支払いの申し入れ)をしたが、Yは、直ちに拒否し、更に同年10月30日到達の書面でAに対し、履行を催告してきた。 その上で、Yは、Xに対し、最終履行期限である昭和62年12月25日に限り、残代金などの支払と引き替えに本物件を引渡、かつ、所有権移転登記手続をすることを求めて訴えを提起した。
それに対しXは、
1)本件売買契約は、Xにおいて買換ができることを特約または前提として行ったものであり、Xが買換できなかったときには、本件契約が当然失効するか、または、Xに解除権が生じるので解除する。また、少なくとも錯誤で無効である。
2)手付倍返しにより解除する。
3)また、本契約は、買換を目的にしたもので、新住宅が確保されないことは死活問題であり、一方、本件地価は、当事者が予見できないほどの暴騰を示し、本件売買代金で新住宅の購入はもはや不可能となった。
その後、双方の諸事情を考えると契約の起訴となった事情が一変したものであり、事情変更理由としてXに解除権が認められるべきであるから、本件契約を解除する、と主張した。
第一審(東京地裁八王子支部昭和62年2月3日)判決は、Xの請求を棄却した。その為、Xが控訴した。
判決の要旨 東京高裁平成元年4月20日民事10部判決)控訴棄却
物件の主観的な瑕疵の調査 中古物件の売買にあたり、その建物に以前に縊首自殺があったことは瑕疵にあたるか?
X夫妻は、小学生の子供を2名持つ4人家族であった。
昭和63年10月、X夫妻は、家族の居住目的でYからY所有の中古マンションを代金3200万円で購入する売買締結をし、手付金500万円を支払った。 売買契約の条件は、残金2700万円を平成元年1月31日に建物の引渡と引き替えに、支払うこととし、契約解除による違約金の定めを売買代金の20%とした。 なお、この他売買契約にあたっては、宅建業者Zが、XY双方の仲介者として委託を受け処理していたものであった。
ところが、XY間の契約締結後の昭和63年11月頃、Xが親戚に本件売買の話をしたところ、親戚は当該マンションの一室で過去に縊首自殺があったことを告げ、その場所がどの部屋であるかを調査し、その現場が本件売買物件であることを確認してくれた。それを知ってX夫妻は愕然とし、直ちに仲介者Zに連絡を取り、縊首自殺の事実の確認を求め、かつ、売買契約の解消を求めた。 その結果、次のような縊首自殺の事実が判明した。
昭和57年9月頃、亭主Yは、当時の妻や子2人と一緒に、本件マンションに入居したが、同年10月14日妻が、心労などからベランダで縊首自殺をしたものであった。その後、Yは、昭和59年5月再婚し、子2人と共に、本件マンションでの生活を継続し、昭和63年1月一戸建てに転居し、現在は、Yの事務所として使用していた。
その間Yは昭和62年頃、本件マンションの処分を検討したが、買い手が付かず昭和63年9月になり、本件仲介業者Zとの間で媒介契約を締結し、その仲介により本件売買契約の成立となったものである。 しかし、Yは仲介業者に対し、妻が縊首自殺した事実を告げてはいなかった。それはZから聞かれなかったからであると述べている。
そこで、仲介業者Zは、Yに対し、代金の減額や契約の解消を交渉したが、Yは、それらを拒否し、Xが手付放棄により解除するならば応じてもよい旨を主張するのみであった。 X夫妻は、Zに責任を強く求めると共に弁護士に依頼し、Yとの交渉を試みたが、YはYの依頼した弁護士を介し交渉を拒否し、手付け放棄を求めるだけであった。 そのため、X夫妻は、Yに対し、縊首自殺の事実は本件売買目的物の瑕疵にあたるとして、瑕疵担保責任に基づき、本件売買契約を解除し、交付済み手付金の返還を求め、かつ、損害賠償請求として契約条項にあった、売買代金の20%にあたる損害金の支払いを求める訴えを提起した。
それに対し、Yは、縊首自殺の事実は6年以上も前のことであり、売主として告げる義務もなく、また、この事実は、隠れた瑕疵に該当しないと主張して争い、逆にX夫妻に対し、現代金の支払を求める反訴を提起した。
判決の要旨 (横浜地裁平成元年9月7日判決)Xの請求認容、Yの反訴棄却
買付証明と売渡承諾書 買付証明書と売渡承諾書を取り交わしただけで売買契約が成立するか?
Xは、自宅及び作業所の敷地としていた本件土地を、当初、より有効に活用するためにビルの建築を計画していたが、その計画を変更し新規事業の資金調達のために売却する方針を固めた。
昭和60年暮以降、多数の不動産会社が本件土地の買付や売却の仲介を希望してX方に出入りしていたが、その中のA社の紹介のもとに、昭和61年2月以降、本件土地の売却先の候補者の一つとしてY社と売買交渉を開始した。
昭和61年2月10日頃、XとYは、具体的売買条件の交渉を開始し、同月24日頃には、次のような点が合意に達した。
1)売却代金額は、金16億21万円(坪当たり金1,700万円)とする。
2)実側面積による売買とし、引き渡しは現状私とする。
3)Xが新規事業資金に充てる必要性を考慮し、代金の早期一括払いを希望していることから、代金の支払時期は、次のようにする。 a.売買契約締結後、内金12億8千万円を支払う。 b.本件土地などの所有権は、契約締結時にYに移転する。
4)本件土地などの引き渡しは、契約締結時から15月以内に行う(Xが自宅及び作業所として利用している場合を考慮)。この引き渡しを担保するため、Yは、代金の内、金3億2千21万円(残金全部)を売買契約締結時にX名義で銀行に預託し、Yがこれに質権を設定する。そして、本件土地などの引き渡しと同時に質権設定を解除する。
5)違約金は、金3億2000万円とする。
6)その他の具体的細部事項については別途協議して定める。 そこで合意に達した点を明らかにするために、同月26日付でYからXに対し買付証明書を交付し、翌27日付でXからYに対し売渡承諾書が交付された。
Yが作成し交付した買付証明書は、Yの社内稟議を経た後担当役員による決済を受けた上で発行されたものであり、その記載内容は、前記合意の通りに従い、代金総額、取引携帯、支払方法、所有権移転時期、引渡時期、質権決定、違約金などに関する条項があり、その他の条項として、「契約内容については別途協議して定める」 との記載があった。
更に、Yがこれらの条件で本件土地などを買い受けた旨が記されていた。
一方、Xが作成し交付した売渡承諾書には、買付証明書記載の条件で本件土地などを売り渡す事を承諾する旨が記載されていた。 その後、XY間で買付証明書や売渡承諾書にいう売買契約締結時を昭和61年3月10日とし同日に正式な売買契約書を取り交わす事が合意され、XYの担当者間で細かな売買条件の交渉が続けられた。
Yの担当者は、3月3日頃その交渉をもとに、売買契約書の素案を作成しXに示し、Xから若干の修正要求がされ、Yの担当者が手直しをして売買契約書案を完成した。 そして、Yの担当者から売買契約書案をXに示すと共にYの社内稟議に回した。 ところが、当初の予定に反し、Yの金融機関との交渉が長引き、正式契約締結予定日の3月10日までに資金調達の見通しがたたず、Yは、その旨を8日にXに連絡した。
結局Y側は、Yの社内稟議を経た担当役員の決済を得ることができず、3月10日には売買契約書の作成に至らず、また、YからXへの内金の支払いもされなかった。
そこで、Xは、Yに対し、17日に至り、代金を22日までに支払うよう求め、同日までに支払がされないときは、契約を解除する旨の通知を送った。 しかし、Yは、それに応じなかったため、Xは25日、代理人を通じて違約金の請求をした。 Yは、Xに対し、売買代金額の増額と支払方法の変更を提案し、交渉の継続を希望したが、Xはそれを拒否した。そして、Xは、28日、本件土地などを第三者に売却し、同日、所有権移転手続きを行った。
その上で、XはYに対し、XY間の売買が成立し、Yが違約したとして違約金3億2000万円の請求訴訟を提起した。
判決要旨 (東京地裁昭和63年2月29日判決) Xの請求を棄却。
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